借金返済は妻から娘に

友人の借金総額は200万円、利息は年10%、借金返済のために友人が使える小遣いは3万円だけ。
1回、酒を飲みに行けば1万円は掛かる、週に1回行くとしたら、小遣い3万円では1万円足りない、そのため、友人は月に1回、誘いを断る。
どうせ、誘いを断るだろうと思ったのだが、友人は飲み屋に付いて来た。
私、「お金はあるの?」
友人、「ああ」
私、「どうしたの、お金」
友人、「妻が他界したんだ」
私、「・・・」
友人の奥さんが他界したのは知らなかった。
友人が総額200万円の借金をしていたのは奥さんから、その奥さんは夫(友人)に200万円の債権(資産)を有していることになるのだが、他界したことで夫である友人がその債権(資産)を相続した。
債権者と債務者が同じになると借金はチャラになるらしく、友人は200万円の借金を返さずに済んだ。
奥さんが他界しているため、借金が無くなって良かったねとは言えない。
どんな思いで酒に付き合ったかは分からないが、私は慰めるつもりで友人と酒を飲んだ。
飲み屋を出て別れる時、私は友人に「大丈夫か?困ったことがあったら連絡をして」
友人、「ああ、そうするよ」
私に心配をかけまいとした友人の背中は、いつもより小さく感じた。
家に帰ると、先ほど別れた友人から連絡があった。
私、「どうかした?」
友人、「暫くは酒に付き合えない」
私、「何かあったのか?」
友人、「妻が俺に有していた債権の200万円を相続したのは、俺だけではなかったんだ、娘も相続をしていたんだ」
私、「娘さんが相続していると何かマズイの?」
友人、「妻の財産を相続したのは俺と娘、つまり、娘は俺に対する債権の半分を相続しており、俺は娘に100万円の借金があることになるんだ」
私、「娘さん、まだ学生だろ」
友人、「学生でも母親に似てお金にガメついんだ、父親の俺から利息まで取ろうとするんだ」
奥さんが他界して暫くは元気なかった友人だが、現在は娘さんに借金を返済するために頑張って働いている。